NPO法人日本バイオカイトクラブ(JBC)のバナーです

目次へ

1.凧の誕生と歴史
  凧と人類の付き合いは古く、凧が発明されたのは、今から2,500年以上も昔の中国だったとされています。紀元前4〜3世紀に中国で書かれた『墨子(ぼくし)』という書物に「木鳶(もくえん)」という凧を意味する言葉があり、また前漢時代初期には韓信(かんしん)が敵の城までの距離を測るのに「紙鳶(しえん)」を作って放ったという伝説があります。日本では、9〜10世紀までには凧の原型が中国から伝来していたものと思われます。その後、凧は東南アジアからインド・パキスタンにいたる東洋全域に広まっていきましたが、西洋に広まったのは15世紀になってからのようです。

  更に、凧揚げが遊びとして盛んになるのは、日本でも西洋でも17世紀に入ってからのことでした。江戸時代、先ず大阪で構造の簡単な角凧が流行し、大きさや凧に描かれた絵の華美を競い合ったといいます。ちなみに、大阪の凧揚げは二月の初午(はつうま)の日が中心でした。そしてまたたく間に江戸にも伝わり大流行しました。人々が季節を問わず、あまりに熱中して仕事をないがしろにするので、禁止令も出るほどだったといわれています。その頃から凧屋が出現し、本格的な絵模様の風や、奴凧などの面白い形をした凧が作られるようになって、一層普及していきました。変わった凧揚げとしては、長崎の「はた揚げ」があります。菱形の凧の糸にビードロを敷き(ガラス粉を塗る)、相手の糸に絡ませ、切り落として遊ぶ凧揚げです。オランダ人がインド経由で西洋から持ち込んだと言われており、その証拠に、インドでは現在でもこの凧揚げが盛んに行われています。明治時代になって都市化が進むと共に、凧は季節ものへと変わっていきました。凧を正月に揚げるのは江戸の風習で、やぶ入りの一月十五日・十六日が特に盛んでした。古くから凧揚げのあった地方では、正月以外の日に揚げることも多く、いまでも、長崎では四月、浜松では五月、新潟県白根では六月に凧揚げの行事が行われています。ちなみに、浜松、白根の凧揚げは大勢の人の力で巨大な凧を揚げる大凧合戦で特に有名ですが、似たような凧揚げは他の地方でも行われているようです。
  (引用:講談社ブルーバックス「からすもビックリ!バイオカイト」伊藤利朗著
)

目次へ

2.専門用語の説明
  皆さん、強い風の吹く中で立っていると、風の力を受けて倒されそうになりますね。また無風の日でも、走っている自動車の窓から手を出すと、手は風の力で後へ押されるのを感じますね。この力を風力と言います。凧にしても飛行機にしても鳥にしても、この力で飛んでいるのです。違うところは、凧は風力を糸で支えることによって揚がるのに対して、鳥や飛行機は自由に空を飛びまわることによって、自分で風を起こし風力を作り出して飛んでいるのです。

  それでは、なぜこの風力でこれらのものが空中にあがるのでしょうか。それは、飛行機の場合は翼、鳥の場合はつばさ、凧の場合は凧面があるからです。長い歴史を持つ凧ですが、これらの凧はいずれも、強い風を表面に受けその風力(風が物を飛ばしたり、吹き上げたりする力)で高く上ってゆくものです。従って凧だけでは風に流されて飛んでいってしまいますから、凧糸をつけて揚げるわけですが、その点では同じ「飛ぶ」といっても、鳥や飛行機とは大きく違って重心を示す図います。
  それでは、風力はどのように飛行機や凧にかかるのでしょうか。以下に、このかかり方が飛行機とこれまでの凧とでは、全く別であることを説明しましょう。説明にあたっては、いくつかの専門用語を使いますので、これらを説明することから始めます。

@重心:長い棒にいくつかの錘をぶら下げたものを指で支えようとして指を動かしてゆくと、棒が水平になって停止する指の位置があります。棒でなくても板でも指で支えることのできる位置があります。これは物に加わる重力の中心点に相当するもので、重心といわれています。

A風圧中心:重心は物体に加わる重力の中心点ですが、何も重力でなくても、例えば一枚の迎角を示す図板に全体にわたって風の力が加わると、この力を指の先で支えることができる中心点が一つ決まります。これを風圧中心といいます。

B迎角:風が吹き付けている翼や凧の面と風の方向との角度のことを迎角といいます(右図参照)。後に説明するように、この迎角は従来の凧と飛行機やバイオカイトとの違いを示す重要な角度です。

糸目中心を示す図C糸目中心:凧と一本の糸とを繋ぐ複数本の糸を糸目といいますが、糸目と糸の結び目から凧糸を延長した架空の線と凧面との交点を以下の説明では、糸目中心といいます。なお、複数の糸目を結び合わせた点のことを糸目中心ということがあります。

D抗力:凧面では風の方向に、翼では進行方向(=風の方向)に働いて、凧を押し流したり、飛行機を止めたりする力のことを抗力といいます。これは、陸上を走行する自動車に車輪の摩擦抵抗や風力の形でブレーキとして働く抵抗や船の造波抵抗に相当します。走行するものに抵抗が大きいと燃費がかさみますので、例えば自動車でも流線型にして、これを極力小さくするのが、省エネ技術の一つです。

E層流:普通一定の速度で広い平野や海上を吹く風は、層をなして流れ、地面から上に行くほど漸次強くなります。このような流れのことを層流といいます。この層を断面的に捉えたものが流線です。

E流線型:物体の形を層流の流線に沿うように作ったものです。飛行機でも鳥でも自動車でも早く移動するものは、自らが作り出す風に対して流線型をしています。


Last Update : 2010-01-28
Copyright (c) 2005 Japan Biokite Club All Rights Reserved.
このホームページのすべての文章の文責および著作権は Japan Biokite Club (JBC) に帰属します。
このページのトップへ戻るボタン 「バイオカイトの飛行原理」という目次へ戻るボタン ホームへ帰るボタン