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5.水平尾翼のない飛行機は飛ばない

揚力と重力のつりあいを示す図 自由に飛びまわる飛行機や鳥や蝶の場合、働くのは重力と揚力だけですから、主翼だけの場合は、左の図に示すように、重心と風圧中心(揚力の中心)が一致し、重力と揚力の両者が大きさは等しく方向が反対というつりあった状態で飛んでいます。また、揚力中心は、迎角とともに移動します。具体的には、上下対照の流線型の翼や平板翼の場合、迎角は失速角より大きい場合、迎角が小さくなるほど風圧中心の位置が翼の前方に移動します。しかし、失速角を越えて迎角が小さくなると、もはや主翼の風圧中心はそれ以上移動しません。この位置を主翼の空力中心といいます。平板翼の場合、この位置は、翼の最前線(前縁)から計って、流れの方向の翼の縦幅(翼弦長)の1/4のところにあります。

水平尾翼がなく、重心が前寄りになった場合、飛行機に働く回転力を示す図  では、空力中心より前に重心を持ってくればどうなるでしょうか。右図はこの状態を示したものです。図から明らかなように、飛行機は矢印の方向に前突っ込みに墜落します。したがって、水平尾翼のない飛行機は、飛ぶことができないのです。水平尾翼の働きを示す図この前突っ込みの墜落を抑えているのが、水平尾翼です。水平尾翼は、翼の延長線から少し尻上がりに設定されています。理由の説明は難しいのでやめますが、風は主翼の近傍では、主翼の延長線に平行に流れています。したがって水平尾翼が図のように主翼の延長線に対して尻上がりになっていれば、水平尾翼に左図に示すような力が働きます。その結果、前突っ込みの墜落は抑えられ飛行機は失速することなく飛ぶことができるようになるのです。水平尾翼の替わりに、ライト兄弟の初期の飛行機のように、主翼の前に水平尾翼と同等の役割をするものを突き出してもかまいません。これをカナードといいます。以上を要約すると次のようになります。

「水平尾翼ないしはカナードのない飛行機は飛ぶことができない。」

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6.バイオカイトとこれまでの凧の違い

これまでの凧は、複数本の糸目を介して凧糸に接続されています。また、バイオカイトは二本の糸目を介して、凧に接続されています。しかしバイオカイトも凧の一種ですから、糸目を介して凧糸に接続されていることは、これまでの凧と同じであるといえます。

   今、凧に適した風が吹いているとすると、凧に加わる風力は、凧に作用する重力に比べて遥かに大きいので、風力を支えるのは、主として糸の引っ張り、すなわち張力です。このことは、飛行機の重力が凧の糸目中心に作用する張力となり、この力が作用する点は、既に定義した糸目中心となり、糸目中心が重心の役割を果たすことになります。

  したがって、重心と糸目中心とを入れ替えることによって、飛行機の場合の迎角に関する議論がすっかり凧にも成立することになります。その結果、水平尾翼を持たない持たないこれまでの凧は失速の状態でしか揚げることができないのです。これに対して、バイオカイトには、凧の面の後部ないし前方に水平尾翼ないしカナードの役割をするものが設けれれているので、失速することなく風にほぼ垂直の力を受けてあがるのです。
 ただし、バイオカイトができるだけ真上に揚がることを狙うのなら、糸目と凧糸の結び目をスライドさせて、できるだけ糸目中心を下げてください。糸目中心が下がるほど(後方にあるほど)迎角が大きくなり、揚力も大きくなるのです。失速しなくても迎角があまり大きくなると抵抗が大きくなるので飛行機の場合は燃料を食うことになって問題です。しかし、凧の場合は糸の抵抗のほうが大きいので、翼の抵抗を低くする必要はないのです。ただ糸目中心を下げすぎると、骨の少ない後部が歪んでしまいます。こうなると失速している証拠ですから、糸目中心を少し上げてください。ことほどさように、バイオカイトの場合は糸目中心の調整が重要なのです。注意すべきことは上に述べたように糸の風に対する抵抗が真上に揚がることを妨げる最大のものですから、太い凧糸を使うことは避けることです。付属の糸が凧糸ではなく、つるつるの抵抗が小さい糸であるのはこのためです。



Last Update : 2010-01-28
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