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7.回転墜落しないための条件

 凧にしろ、飛行機にしろ、安定に飛ばすためには、いろいろな条件を満たさなければなりません。これを以下に列挙します。

上反角を説明する図@   上半水汲み運動を説明する図角があること:右の図のように左右の翼が一定の角度で上に反って取り付けられていることを、「上反角を持つ」といいます。上反角がないと、大きな後退角を持っていない限り、飛行機でもバイオカイトでもきりもみ墜落します。

A  翼が後退角を持っていること:飛行物体が安定に飛行するためには、右下の図のように翼が後退していることが必要です。例えば蝶の展翅形のような前進翼のものは、飛ぶことができないのです。実際自然の中で飛翔する蝶は、すべて後退翼をなしています。

B  水汲み運動を起こさないこと:凧が頭を上にして飛ぶためには、凧の重心が糸目中心より下になければなりませんが、重心と糸目中心の後退角を説明する図距離があるためにちょうど体操の選手が鉄棒で大車輪をするようにくるくると廻って挙句の果てに墜落することがあります。これが飛行機にはない凧特有の水汲み運動です。とくに竹や重い和紙で作られた市販の和凧は、いわゆる凧の尾をつけない限り、この運動が生じて墜落します。しかし軽くて強い不織布やラミネート紙で作られたバイオカイトの場合は、凧の尾を付けなくても、面の横幅がよほど小さくない限り、水汲み運動は起こしません。バイオカイトでも水汲み運動を起こして墜落することがありますが、この場合は糸目の位置を下げて重心に近づければ、これを抑えることができます。ゲイラカイトのようにキールを付けるのもこれを回転墜落を抑える一つの方法です。和凧でも畳数畳以上もある大凧では、尻尾がなくても水汲み運動は起こしません。
 さらにいえば、糸目の位置をうまく調整すれば、墜落することなく水汲み運動を起こして、大空を駆け回るバイオカイトとすることができます。これを専門用語で自励振動(自ら起こす振動の意味)といいます。
  ついでながら、バイオカイトの自励振動についていえば、糸目の調整をうまくやれば、一定の風のもとでも、蝶や鳥のように羽ばたかせることができることを著者は理論的証明し、実証しています)。動画1は、蝶のバイオカイトが自分のちからでが羽ばたいているところです。この説明については「カラスもびっくり!バイオカイト」(講談社ブルーバックス 伊藤利朗著)を参照してください。

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8.バイオカイトの作り方

以上の理論が理解できたら、いよいよバイオカイトを作って揚げてみましょう。

はねを広げた蝶の写真。左右の翼がアンバランスなのは、右側が博物館などの展示で見られる展翅型を、左側が実際に飛ぶときの形である飛翔型をそれぞれ示す。   作るにあたっては、まずバイオカイトのシートの形状と図柄をデザインする必要がありますが、この作業はデザインの専門家でもない限り非常に難しいものです。しかし幸い生き物(バイオ)の図鑑がいろいろ市販されていますので、これを参考にして形状と図柄を作ることをお勧めします。バイオカイトとは、生き物(バイオ)を参考にして作るカイトという意味です。

  図柄としては第7章で説明した安定に飛行する条件を満たすように図鑑の図を変形しなければなりません。このためには、まず形状が左右対称であることが必要です。また翼形が全体として後退翼であることも必要です。例えば、蝶の場合、図鑑の図形は一般に右図の右翼のように極端な前進になっていますが、バイオカイトとして飛ばすためには、左翼のように全体として後退翼になるように変形しなければなりません。ついでながら蝶の触角は切り落として、図形の後部に後述するような尾翼を設けてもよいし、切り落とさずに触角の形成する三角形をカナードとして使うことができます。

 以上の作図はPC上でやれば、手持ちのプリンターで凧のシートに印刷することができます。こ横長構造の凧の骨組みとそれらの名称を示す図の場合、プリンターに入りきらない図形であれば、何図かに分割して印刷する必要があります。これは技術の要ることですが、「カラスもびっくり!バイオカイト」(講談社ブルーバックス伊藤利朗著、前掲)に搭載されているCD−ROMにこの例が多数掲載されていますので、ご利用ください。また手書きの図形ができれば、森久エンジニアリングに図形メールで添付いただき、同時に大きさをお知らせいただければ、バイオカイトのシートの上に後述する骨の位置まで印刷してお届けすることができます。

 また森久エンジニアリングのホームページ「バイオカイト」あるいは、「世界の蝶」には多数の図柄が掲載されていますので、この中から適当なものを選んでいただき大きさを指定いただければ、やはり骨の位置まで印刷してお届けすることが可能です。

 最後に骨の位置の決定法について説明します。

生物の図鑑からとった図は、鳥や蝶の飛ぶ姿のような横長の図形とペンギンや虎の顔のような縦長の図形の二つに分類されますが、バイオカイトの骨組みも基本的にはこの二つに分類され、次のようなものになります。蝶に触覚を付けた場合の骨組みとそれらの名称を示す図

@   横長の骨組み:横長の図形は飛ぶ鳥や昆虫などといろいろありますが、各種の骨の相対関係は同じものになります。右上の図は各種の骨の配置を示したものです。いずれにしても、バイオカイトの周りの風は、きれいな層をなして流れていて、風力は翼の前の部分にしかかかりません。翼の後半では、流れはシートに沿って流れ、骨がなくても形は崩れません。この点が後半まで骨で強化する必要のあるこれまでの凧との大きな違いです。さて骨は、V骨、縦骨、斜骨、尾翼形成骨、前縁強化シート、横桁、ばねパーツなどからなっています。このうちV骨、縦骨、斜骨、尾翼縦長構造の凧の骨組みとそれらの名称を示す図形成骨は細くて軽い骨、横桁は、太くて強度の高い骨、前縁板は軽くては若干厚みのある細い板状の骨です。また中心骨は長いので折れにくい骨からなり、ばねパーツは、ガラスファイバー強化材料からできたばねとそれを支える部品からなっています。 工作に当たっては、まず、シートの裏に後退翼を形成する斜骨、流れに平行に設置されてシートのひずみを少なくする縦骨、尾翼形成骨、前縁板、尾翼をはねあげるマジックテープと中心にあって糸目が結ばれる一本の長い中心骨を貼り付けます。最後にシートの表に全風力を支える横桁(左右で2本)を貼り付け、またシートを裏向けてばねパーツを貼り付ければ終わりです。蝶などでは右の図のように尾翼の替わりに二本の触角が作る三角形をカナードとして飛ばすことができます。

A縦長の骨組み:縦骨と前縁板がないので、左上の図のように多少簡単になります。骨の役割や貼り付けかたは同じです。

  以上のシートや骨やパーツの材料は森久エンジニアリングから販売されています。


Last Update : 2010-01-28
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